搾乳器外せば円き跡と汗 ほか(2023年澤9月号掲載句)

鉄フライパンの水焼き飛ばし夏来る

持ち上げて水鉄砲の子を脱がす

夏風邪の子眠る人形の髪鷲づかみ

搾乳器外せば円き跡と汗

腹巻通す眠る子の足を上げ

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この年2度目の「澤集」巻頭(一席)をいただきました。うれしい。

とくに搾乳器の句は、小澤先生にとりあげていただけました。


子育てを通じて経験してきたことのなかには、

衝撃的なことがたくさんあるのですが、

そのなかのひとつが「搾乳器」でした。


正直、母乳をあげる立場になるまで、

「搾乳」という言葉自体を知らなかったのですが、(読めば意味はわかりますが)

当事者になって、それはとても大切なことなのに、

世の中ではほとんど知られていないことに気づかされました。


母乳って、赤ちゃんが飲むときに出てくるっていう単純なものではなくて、

ずっとじわじわとつくられていて、おっぱいに溜めているんですね。

だから赤ちゃんがずっと寝ているとか、外出していて母乳をあげられないとか、

タイミングよく飲んでもらえないと、ずーっと外に出られないで渋滞してしまう。


放っておくと詰まってしまい炎症を起こして、熱が出てしまったり

お母さんの体調を悪化させてしまうので、適度に身体の外に出すことが必要なんです。

これが、母乳を絞って出す、搾乳です。


とくにお仕事をしていたりすると、もちろん授乳なんてできないから

母乳の出が多い方なんかは定期的に搾乳しないと大変。

だいたいはトイレですることが多いから、(ていうかトイレしかない)

もし個室が少なかったら、他の人に配慮してあまり長く占領しないようにとか

ずっと休憩とっていると思われたらどうしようとか、

いろいろ周りの目を気にしないといけない。


わたしが会社で働いていたとき、お母さんになった先輩たちがいましたが、

もしかしてそういう苦労もあったもしれません。

小さな会社だったから、男女各1個しかトイレがなかったし。

当時からそういうことを知っていたら、もっと配慮できたのになーと思います。


子どものお世話をするだけでも大変なのに、

お母さんは自分のからだの調子も気にして24時間過ごしているんですよね。

そういうことももっとみんなで共有して、やさしくしあえる世の中であるといいなぁ。

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