桃売りの差し出す試食やナイフごと ほか(2023年澤12月号掲載句)

拭いきれぬエコーのジェルや秋気澄む

仕事なくただ泣く子抱く秋の昼

桃売りの差し出す試食やナイフごと

パンツ脱がされ嬰の人形冷やかに

うそ寒の足のぶらぶら補助便座

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子どもが生まれてからはじめての旅行で、福島県の裏磐梯に行ってきました。

「桃売り~」は、そこでのエピソードからつくった句です。


福島といえば桃。旅行に行ったのはシーズンの終わり頃だったのですが、

お昼ごはんを食べに立ち寄った地元のラーメン屋さん

(子どもがいると、食べられるか、子どもが行けるかどうかでお店選びが大変ですね)

の店先に桃の販売車がありました。


並んでいる桃を見ていると、娘ちゃんにどうぞとおじさんが

目の前で桃を剝いてくれて試食をくれたのです。

でも、おじさんはちょっとあげかたを迷ったのでしょう、

スライスされた桃を剥いた小さなナイフと一緒に渡してくれました。

手で触ったのを子どもにあげるのは良くないかな、と考えたのだと思います。


一瞬のことでしたが、コロナ後時代的だなぁと思って句にしてみました。

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